特定保健指導でのコーチング
特定保健指導で必要な技術として、厚生労働省はカウンセリング技術、アセスメント技術、コーチング技術、ティーチング技術、自己効力感を高める技術、グループワークを支援する技術など、さまざまな技術を挙げている(行動変容のための保健指導技術(援助技術))。つまり、特定保健指導はコーチングだけで行うものではなく、その他の技術も必要に応じて駆使しなければ上手く行かないのである。しかし、保健師等の研修では相変わらずコーチングへの関心が高く、質問も多い。従来の教材は複雑過ぎるし、他の技術との区別が曖昧なものもあり、分かり辛いのかもしれない。そこで、私が講師を務める研修会では既に紹介してきたが(資料:特定保健指導での質問の流れ)、ここでも特定保健指導でのコーチングの流れを端的にまとめておきたい。
やる気になった準備期の利用者に行動計画を立ててもらおうとして、厚生労働省が例示した教材を使うと、計算が複雑で面倒な作業となる。①腹囲の現状を確認し、②当面の目標を設定し、③1ヵ月で1cm減の「確実にじっくりコース」か、1ヶ月で2cm減の「急いでがんばるコース」か、どちらかを選んだ上で、目標達成のための期間を計算し、④腹囲を1cm減らすのに7000kcal減らすとして、1日に減らすエネルギーを計算して、⑤そのエネルギーをどのように減らすかを決めるのである(「標準的な健診・保健指導プログラム(暫定版)概要」p.40)。
ところが、このような面倒な計算をしなくても、誰でも「確実にじっくりコース」を選べば1日に233kcal減らすことになり、「急いでがんばるコース」を選べば1日に466kcal減らすことになる。つまり、結果は同じなのであり、わざわざ計算するまでもない。また、当面の目標も「確実にじっくりコース」ならば自動的に1ヵ月後1cm減(3ヵ月後3cm減)となり、「急いで頑張るコース」ではその2倍となる。だから、コースを選んでもらって、エネルギーを減らす方法を決めてもらえばよいのであり、あとは当面の目標や最終ゴールを目指して実施・継続してもらうだけなのである。
また、ビジネス界のセミナー業者は、傾聴や賞賛(ほめる)など、他の技術もコーチングとして紹介することが多い。しかし、それでは他の技術を学習済みの人達が混乱してしまうし、他の技術との併用や使い分けも難しくなる。従って、ここではコーチングを「質問によって答えを考えてもらい、自己決定や自己解決を支援すること」という意味に限定する。
準備期の利用者にコースと方法を自己選択してもらう初回面接と、その後(実行期)の継続面接において、コーチングでかかわる場合の最もシンプルな質問の流れは、例えば次のようになる。
〈初回面接〉
Q1 腹囲は何cmでしたか?(手元にデータが揃っている場合が多い)
Q2 内臓脂肪が貯まった理由は何だと思いますか?
Q3 85cm(90cm)未満を目指すことが望まれますが、どちらのコースで進めますか?
確実にじっくりコース:1ヶ月1cm減・・・1日233kcal減
急いで頑張るコース:1ヶ月2cm減・・・1日466kcal減
Q4 どのような方法で減らしますか?
Q5 いつから始めますか?
end.分かりました。じゃあ、そうしましょう。ときどき経過をお聞かせ下さい。
〈継続面接〉
Q1 どのように努力してきましたか?
Q2 目標の85cm(90cm)未満に、どれぐらい近づきましたか?
Q3 続けるうえで障害になっていることはありますか?
Q4 今後、どうすればよいと思いますか?
end.分かりました。じゃあ、そうしましょう。また、ときどき経過をお聞かせ下さい。
※印刷して記入するためのPDFファイルはこちら
既に述べた通り、関心のない人(無関心期)や関心はあるが直ぐに実行する気がない人(関心期)には、コーチングも空振りに終わるであろう(行動変容ステージと支援方法)。準備期や実行期に入った人にコーチングは効果的なのだが、それでも必要に応じてティーチングなどの他の技術を併用したり、微妙に使い分けたりしなければ、実際の特定保健指導は上手く行かない。
情報提供としてのティーチング、指示による積極的ティーチング、助言による消極的ティーチング、ティーチングとコーチングの使い分け、セルフコーチングでダイエット、COMMUNICARE blog:コーチングなども、ご参照下さい。


「
GW前半を利用して、久々に新しいウェブページを作成した。とは言っても、既にアップしている「
スポーツ界とビジネス界で共通して大切なことと言えば、何でしょうか。あまり考えたことのない問題かもしれませんが、この質問の答えはコーチングの特徴を理解するうえで、とても大切なポイントです。コーチングはスポーツ界で生まれて、ビジネス界で大きく発展しました。ビジネス界ではスポーツ界と同じことを重視する傾向にあり、そのためにコーチングが受け入れられ、浸透して行ったのです。
ご存知の方も多いと思いますが、質問には二つのタイプがあります。一つは、「はい」や「いいえ」などと応え方が決まっており、考えなくても応えられる「閉ざされた質問」です。そして、もう一つは、応え方が決まっておらず、自分で考えながら自由に応えられる「開かれた質問」です。

最近のコメント