カテゴリー「コーチング」の記事

ワークショップのお知らせ:自立・成長を支援するリーダーシップ ―ティーチングとコーチングの使い分け―

第97回東京支部研究会のご案内です。「自立・成長を支援するリーダーシップ ―ティーチングとコーチングの使い分け―」をテーマとするワークショップです。2016年2月7日(日)9:30-16:30、茗荷谷の放送大学東京文教学習センターにて。お誘い合わせのうえ、ご参加ください。97a_297b_3

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はじめのコーチング 2012年夏

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 夏の読書案内<その3.最終回>。「諏訪のことだから、そろそろ自分の本を宣伝するだろう」と邪推しているあなた。とんでもありません。世界の職場に大きな影響を及ぼした名著のみを、このシリーズでは紹介しておりますわ。ただし、今回が最終回。
スタッフへの権限移譲が進み、管理職がいなくなったのがフラッド型組織。ところが、高度な専門家になるほど一人前になるのに時間がかかり、その過程でサポートも必要となります。管理職をサポーター役に位置づけたのが「逆さまのピラミッド」であり、サポートの方法として出てきたのがコーチングです。
 管理職研修やリーダー研修で「コーチングを勉強した人は?」と尋ねると、多くの人が手を挙げます。ところが、「じゃあ、ジョン・ウィットモアを知っている人は?」と尋ねると、誰も手を挙げないのです。スポーツ界のインナーゲームにヒントを得てコーチングを考案し、それをビジネス界に導入した人物を知らないなんて、「精神分析は勉強したけど、フロイトって誰?」と言っているようなものです。
 どうして、こんな奇妙なことになっているのでしょうか。ジョン・ウィットモアは『はじめのコーチング』の第3版序章で、「残念なことに、従来通りの方法にコーチンという名称をつけるケースが出てきた」「急ごしらえの不十分な訓練しか受けていないマネジャーやコーチと称する人達が出てきた」と嘆いています。確かに、短時間のセミナーで認定資格を取った即席の「専門家」が大勢おり、そのような人達もコーチングの原稿を書いたり、職能団体の研修講師を務めたりしています。そのためにコーチングの定義は曖昧となり、効果的なコミュニケーションのすべてをコーチングとする傾向さえ現れています。
 ジョン・ウィットモアの本を読まなければ、本来、何がコーチングかは分からないはずです。コーチングの原典である『はじめのコーチング』を読めば、ほめるのはコーチングでないし、タイプ別接し方も関係ないことが分かります。
 ただし、コーチングだけでは育ちません。相手の自立度に応じて、ティーチングと使い分けないと。また、ピラミッド組織も要らなくなったわけではありません。ピラミッド組織でないと、うまく行かないこともあります。これ以上言うと、私の本の宣伝をせざるを得なくなりますので、ここいら辺りでこのシリーズを終わりとし、皆さん、よい夏を。

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看護過程こそが目標管理 ・・・ドラッカーを読み解く

Photo  目標を立てて計画し、実践して評価するという、一連の看護過程こそが、看護師にとっての目標管理である。それなのに多くの看護師は、看護目標を立てずに、業務改善や資格取得や看護研究などの二次的な目標ばかり立ており、肝心の看護は標準看護計画に則して、いわば指示通り・マニュアル通りとなっている。このような現状を嘆き、改善を訴えて走りまわっているのだが、私の訴えの根拠について、目標管理を提唱したドラッカーの言葉を引用しながら、ここで説明しておきたい。
 まず、ドラッカーは目標管理について、『現代の経営』で次のように述べている。

 今日必要とされているのは、一人ひとりの強みと責任を最大限に発揮させ、彼らのビジョンと行動に共通の方向性を与え、チームワークを発揮させるためのマネジメントの原理、すなわち一人ひとりの目標と全体の利益を調和させるマネジメントの原理である。これらのことを可能にする唯一のものが、自己管理による目標管理である。
 P.F.Drucker 1954(邦訳p.187)

 医療チームにおいて看護師が強みとするのは、いったい何だろうか。看護師が責任を負わなければならないのは、いったい何についてだろうか。それは、業務改善でもなければ、資格取得でもなく、もちろん看護研究でもない。医師に看護師のような看護はできないし、人出不足だからといって事務職に看護をしてもらうわけにもいかない。看護師の強みは看護そのものであり、看護師は看護に責任を負わなければならないのである。
 看護目標を立てることによって、看護師は強みを発揮することができるし、責任を負うこともできるのである。ただし、医師や事務職など、他の職種にもそれぞれに強みがあり、それらの目標と看護師の目標とが、うまく噛み合わなくてはならない。そこで、職場の理念に基づいて各職種が目標を立てることになり、そうすることで共通の方向性が与えられて、チームワークが発揮されるのである。
 職場の理念は、職場が存在し、事業展開する目的を表している。理念を実現するために職場があるのであり、職員が集まって共に働いているのである。

 目標管理の利点は、自らの仕事を自ら管理することである。その結果、最善を尽くすための動機がもたらされる。高い視点と広い視野がもたらされる。管理とは自らを方向づけることを意味する。しかし人を支配することも意味する。目標管理における目標とは、前者の意味での管理の基礎となるものである。
 P.F.Drucker 1954(邦訳p.179)

 業務改善や資格取得や看護研究なども、もちろん必要であり、大切である。しかし、業務改善がしたくて看護師になった人はいないであろう。看護師の大半は、看護がしたくて看護師になったのである。
 そのために、様々に工夫しながら、よりよい看護を提供することができて、患者さんに喜んでもらえると、看護師は仕事のだいご味を味わうことができる。「看護師になってよかった」「これからもがんばろう」という気持ちになれるのである。よりよい看護を実現するために看護過程は欠かせないのであり、それによってドラッカーが述べた通り、「最善を尽くすための動機がもたらされる」のである。
 もちろん、新人の頃は標準看護を目指してもいいが、いつまでも標準では質の高い看護とは言えない。しっかりアセスメントして、標準看護に足らないものを付け加えたり、要らないものを削ったりすることで、一人一人の患者さんに合った最善の看護を提供することができるのである。

 私が初めて目標管理を提唱して以来、この言葉はスローガンとさえなった。目標管理を採用している組織は多い。しかし、真の自己管理を伴う目標管理を実現しているところは少ない。自己管理による目標管理は、スローガン、手法、方針に終わってはならない。原則としなければならない。
 P.F.Drucker 1974(邦訳p.141)

 『現代の経営』を出版してから20年後に、ドラッカーは『マネジメント 基本と原則』において、目標管理の現状を嘆いている。スタッフの目標をスタッフ自身が自己管理せずに、管理職や人事部が管理している職場も珍しくない。ドラッカーが嘆いた現状は、目標管理が広がった今日の看護界にとっても、無縁ではないであろう。
 「機能評価で外部からチェックされるから」という理由だけで、形だけの目標管理に終わってはならない。年に3回面接したり、資料をファイルに綴じて共有したりする手法が、目標管理ではない。仕事をする上での「原則」にしなければならないのであり、つまり、日々の仕事を目標管理で行わなければならないのである。
 看護師にとっての日々の仕事とは、言うまでもなく看護である。たとえ年間目標を立てるにしても、理念に則した患者満足度の改善・向上など、一人一人の患者さんの看護を通して達成される目標でなくてはならない。看護の仕事が終わった後に、努力しなければ達成できないような目標を立てて、しかも、その目標の到達度によってボーナスなどが査定されるならば、看護そのものに対する労働意欲や継続意欲は失せてしまう。そして、日々の看護は疎かになり、看護の質の悪化につながってしまうのである。

 誰もまだ、働く者に対して「仲間のマネジャー諸君」とは呼びかけていない。しかし、それこそが目標である。今後も、マネジメントの権限と権力、意思決定と命令、所得の格差、上司と部下という現実は残る。しかし我々には誰もが自らをマネジメントの一員とみなす組織を作り上げるという課題がある。
 P.F.Drucker 1974(邦訳p.77)

 ドラッカーが「マネジャー諸君」と呼び掛けたのは、管理職に対してではなく、全てのスタッフに対してである。つまり、管理職から一人一人のスタッフへと、マネジメントの権限と権力を移譲しようとしたのである。しかし、管理職が上に立って意思決定し、下のスタッフに命令するという、上意下達のピラミッド組織は、ドラッカーの時代には根強く残っていた。ピラミッド組織のままでは、目標管理は上手く行かない。ピラミッド組織に代わる新しい組織を作ることを、ドラッカーは「課題」として残して死んでいったのである。
 その後、スカンジナビア航空を再建したヤン・カールソンは、ピラミッド組織を解体して権限移譲を徹底した。そして、ヤン・カールソンの影響を受けたカール・アルブレヒトが、権限移譲された後の組織として、逆さまのピラミッドを提唱した。さらに、権限移譲されたスタッフを管理職がサポートする具体的な方法として、ジョン・ウィットモアがコーチングを提唱したのである。目標管理を成功させるためには、ドラッカー以降の理論と実践の展開を理解しなければならないのである。

<文献>
1)P.F. Drucker 1954.『現代の経営』ダイヤモンド社.
2)P.F. Drucker 1974
.『マネジメント 基本と原則』ダイヤモンド社.
3)諏訪茂樹 2012.「目標管理 ドラッカーの意図と限界」日本保健医療行動科学会年報 Vol.27,p253-257.
4)諏訪茂樹 2011.「ティーチングとコーチングで自立した看護師を育て、質の高い看護の実現へ」(インタビュー記事)医学界新聞 No.2921,p4-5.

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頭と手足 -職場組織のあり方と労働意欲

Photo_2  ある職場のトップは「職員のモチベーションをアップする研修」の企画案を募集し、優秀な企画を出した職員を表彰していた。私はその話を聞いて、奇異の念を抱かざるを得なかった。職員の労働意欲は職場やトップのあり方に大きく左右されるのであり、職場やトップのあり方を変えずに、職員のやる気だけを向上させる研修はあり得ない。もしもあったとずれば、それは非科学的ないかがわしいものと言わざるを得ないのである。

 職場のトップが陥る大きな間違いの一つは、職場の組織を身体の組織と同じだと考えてしまうことだ。トップが頭で職員は手足だと思ってしまい、自分が考えた通りに動くことを職員に求めてしまうのである。しかし、言うまでもなく、職場の組織は身体の組織と異なる。組織を構成する職員の一人ひとりが頭脳を持っているのであり、創意工夫を凝らして働く人間的能力を持ち合わせているのである。それなのに、創意工夫を凝らすことは求められず、手足として働くことを求められると、勤務時間中は人間としての心を忘れて、生活のためだけに仕方がなく働くようになる。勤務時間中は死んだ振りをして、勤務時間外に自己実現して人間性を回復しようとする。非人間的な労働時間は短い方がいい。そのために、労働時間の短縮を求めるようになるのも、当然のことであろう。また、生活のために仕方がなく働くだけなので、最善を尽くそうとはせず、サボタージュが生じても不思議ではない。

 繰り返しとなるが、一人ひとりが頭脳を持っており、創意工夫を凝らして働く人間的能力を持ち合わせているのである。そして、そのような人間的能力を仕事で発揮することができれば、人々は仕事のだいご味を味わうことができるようになるのであり、仕事が遊びと同じく、自然に楽しい生活の一部、人生の一部となるのである。もちろん、創意工夫を凝らして働いてもらうためには、まずは仕事の基本をティーチングで教えなければならない。そして、仕事を覚えるに従って徐々に権限移譲して行き、接し方もティーチングからコーチングへとシフトして行き、最終的には自立してもらわなければならない。スタッフを単純労働者扱いして支配するリーダーシップではなく、自立したスタッフを育てるリーダーシップが必要となるのである。

ティーチングとコーチングの使い分け組織改革なきコーチングなんて、などの記事もご参照下さい。

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「コーチングの誕生と各分野での展開」児童心理2010年6月号臨時増刊

Jidosinri  5月12日に発売された児童心理6月号臨時増刊「コーチングとは何か」において、「コーチングの誕生と各分野での展開」を執筆した。コーチングの発展や普及に心理学者や教育学者など、アカデミックな専門家はほとんど関与しておらず、そのためか、コーチングの学術的定義は極めて不十分であり、まさに「コーチングとは何か」が分かりづらくなっている。そこで、曲がりなりにもコミュニケーション論などを専門とする社会科学者として、コーチングの誕生と各分野での展開を整理してみた。

 しかし、目次の執筆陣をみると、私だけが浮いているというか、毛色が違うというか、場違いなところに紛れ込んだ感じである。たまに「仲間だ」と勘違いした人が私に近寄ってくるが、私はコーチングだけではなく、ティーチングやカウンセリングやナラティブなど、様々なコミュニケーション・アプローチを扱っているし、コーチングだけに熱い思いを寄せているわけではない。決してコーチング主義者ではないし、プロのコーチでもなければコーチングのセミナー業者でもないのである。そんな私が執筆したのだから、今までの他の説明とは、ちょっと違うテイストになっている。

児童心理6月号臨時増刊目次 
≪コーチングとは何か≫
 コーチングとは―基本的な考え方/伊藤 守
 コーチングの誕生と各分野での展開/諏訪茂樹
 コーチングとカウンセリングの違い/上田純子
 ビジネスコーチングと学校教育におけるコーチング―その共通点と相違点/本間正人
 学級経営にコーチングを活かす/大石稜子
 授業にコーチングを活かす/上井 靖
 キャリア教育にコーチングを活かす/石川尚子
 スポーツ指導におけるコーチング/高畑好秀
 スクールリーダーとしてコーチングをどう活かすか/加藤雅則 
≪コーチングの三つの基本スキルを学ぶ≫
 傾聴/佐藤扶由夫
 質問/川本正秀
 承認/稲垣友仁
 コーチングにおける目標設定と達成のプロセス/原口佳典
 学校にコーチングを導入する意義と視点―何が求められているのか/千々布敏弥
≪学級担任が行うコーチング≫
 意欲がない子にやる気をもたせる/神谷和宏
 意気消沈している子の気持ちを立て直す/桑原規歌
 行事に向けて学級の団結力を高めたい/川本憲明
≪管理職が行うコーチング≫
 「管理職」から「自己管理職」へ―〝教育コーチ〟という〝あり方〟/小山英樹
 教職員のモチベーションを高める育成型マネジメント/久米昭洋
 まとまりのない教師集団にチームワークをつくりだす/佐藤敬子
≪子育てに活かすコーチング≫
 勉強の習慣が身についていない/上野恭子
 ゲームばかりしている/菅原裕子
 塾や習いごとをやめたがる/酒井利浩

【ご注意】「人生が変わる」「成功する」などと巧みな言葉で誘い、高額なセミナーやセッションをしつこく勧める業者もおりますので、ご注意下さい。

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平井伯昌コーチに感謝、そして注目

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 日経ビジネスAssocie(2010年1月19日-2月2日合併号)のコラムで、競泳日本代表ヘッドコーチの平井伯昌氏に、私の理論を紹介していただいた。コラムのタイトルは"金メダリスト"育成塾 第25回 相手の状況を見極めてティーチングとコーチングを使い分ける。事前に担当編集者から問合せがあったので、私は快諾していた。日本の競泳界を牽引する名コーチによる紹介なので、自分が直接に執筆したりインタビューを受けたりした記事ではないが、とても嬉しかった。同誌2009年02月17日号の同コラム第3回「コーチングを始める前にティーチングが必要だ」とあわせて読むと、コーチングのみに心を奪われてはいけないことが、よく分かると思う。

 ところで、平井氏の指導法を調べてみたら、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」のウェブページで、興味深い紹介文を見つけた。「指示を出しすぎると、余計泳ぎが崩れてしまう。その選手の性格も考え、最適な一言を選んで、指示を送る」というのは、ティーチングの心がけそのものである。また、「決して迷いや動揺を見せないよう、必死で自分を抑える」とか「常に自らを抑え、選手を冷静にさせてきた」というのは、感情労働そのものである。平井氏の仕事の流儀は、要注目である。感情労働については近々、当ブログの雑文(走り書き原稿)で改めて解説したい。

 関連記事:ティーチングとコーチングの使い分け指示による積極的ティーチング助言による消極的ティーチング感情労働

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特定保健指導でのコーチング

Self_coaching_diet 特定保健指導で必要な技術として、厚生労働省はカウンセリング技術、アセスメント技術、コーチング技術、ティーチング技術、自己効力感を高める技術、グループワークを支援する技術など、さまざまな技術を挙げている(行動変容のための保健指導技術(援助技術))。つまり、特定保健指導はコーチングだけで行うものではなく、その他の技術も必要に応じて駆使しなければ上手く行かないのである。しかし、保健師等の研修では相変わらずコーチングへの関心が高く、質問も多い。従来の教材は複雑過ぎるし、他の技術との区別が曖昧なものもあり、分かり辛いのかもしれない。そこで、私が講師を務める研修会では既に紹介してきたが(資料:特定保健指導での質問の流れ)、ここでも特定保健指導でのコーチングの流れを端的にまとめておきたい。
 やる気になった準備期の利用者に行動計画を立ててもらおうとして、厚生労働省が例示した教材を使うと、計算が複雑で面倒な作業となる。①腹囲の現状を確認し、②当面の目標を設定し、③1ヵ月で1cm減の「確実にじっくりコース」か、1ヶ月で2cm減の「急いでがんばるコース」か、どちらかを選んだ上で、目標達成のための期間を計算し、④腹囲を1cm減らすのに7000kcal減らすとして、1日に減らすエネルギーを計算して、⑤そのエネルギーをどのように減らすかを決めるのである(「標準的な健診・保健指導プログラム(暫定版)概要」p.40)。
 ところが、このような面倒な計算をしなくても、誰でも「確実にじっくりコース」を選べば1日に233kcal減らすことになり、「急いでがんばるコース」を選べば1日に466kcal減らすことになる。つまり、結果は同じなのであり、わざわざ計算するまでもない。また、当面の目標も「確実にじっくりコース」ならば自動的に1ヵ月後1cm減(3ヵ月後3cm減)となり、「急いで頑張るコース」ではその2倍となる。だから、コースを選んでもらって、エネルギーを減らす方法を決めてもらえばよいのであり、あとは当面の目標や最終ゴールを目指して実施・継続してもらうだけなのである。

 また、ビジネス界のセミナー業者は、傾聴や賞賛(ほめる)など、他の技術もコーチングとして紹介することが多い。しかし、それでは他の技術を学習済みの人達が混乱してしまうし、他の技術との併用や使い分けも難しくなる。従って、ここではコーチングを「質問によって答えを考えてもらい、自己決定や自己解決を支援すること」という意味に限定する。
 準備期の利用者にコースと方法を自己選択してもらう初回面接と、その後(実行期)の継続面接において、コーチングでかかわる場合の最もシンプルな質問の流れは、例えば次のようになる。

〈初回面接〉

Q1 腹囲は何cmでしたか?(手元にデータが揃っている場合が多い)
Q2 内臓脂肪が貯まった理由は何だと思いますか?
Q3 85cm(90cm)未満を目指すことが望まれますが、どちらのコースで進めますか?
     確実にじっくりコース:1ヶ月1cm減・・・1日233kcal減
     急いで頑張るコース:1ヶ月2cm減・・・1日466kcal減
Q4 どのような方法で減らしますか?

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Q5 いつから始めますか?
end.分かりました。じゃあ、そうしましょう。ときどき経過をお聞かせ下さい。

〈継続面接〉

Q1 どのように努力してきましたか?
Q2 目標の85cm(90cm)未満に、どれぐらい近づきましたか?
Q3 続けるうえで障害になっていることはありますか?
Q4 今後、どうすればよいと思いますか?
end.分かりました。じゃあ、そうしましょう。また、ときどき経過をお聞かせ下さい。

※印刷して記入するためのPDFファイルはこちら

 既に述べた通り、関心のない人(無関心期)や関心はあるが直ぐに実行する気がない人(関心期)には、コーチングも空振りに終わるであろう(行動変容ステージと支援方法)。準備期や実行期に入った人にコーチングは効果的なのだが、それでも必要に応じてティーチングなどの他の技術を併用したり、微妙に使い分けたりしなければ、実際の特定保健指導は上手く行かない。

情報提供としてのティーチング指示による積極的ティーチング助言による消極的ティーチングティーチングとコーチングの使い分けセルフコーチングでダイエットCOMMUNICARE blog:コーチングなども、ご参照下さい。

文献:諏訪茂樹『対人援助のためのコーチング -利用者の自己決定とやる気をサポート-』中央法規出版

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増刷決定!

Coachingbook

 出版されて3ヶ月ほどで増刷になった本もあり、今も売れ続けてロングセラーになっている。それに比べると、出版後10ヶ月だから、ややスローペースかもしれないが、「対人援助のためのコーチング 利用者の自己決定とやる気をサポート」(中央法規出版)がようやく増刷決定となり、読者や書店や出版社の皆さんに感謝、感謝。

 ビジネス界のセミナー業者が中心となってコーチングを広めており、学者はほとんど関わっていないし、心理学者や教育学者はほぼ無視している。そのことによるメリットもデメリットもあるが、コミュニケーション論を専門とする社会科学者として、「魔法」「奇跡」「最強」「思い通りに相手を操る」などという、熱い思いのセミナー業者や素人さんの暴走に警告を鳴らしながら、コーチングの可能性と限界や他のアプローチとの違いを冷静・公正に語る学者が1人ぐらい居てもよいだろうと、自分では思っている。

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対人援助のためのコーチング  ―利用者の自己決定とやる気をサポート

Coaching 2007年7月 中央法規出版

1.コーチングとは? 2.ゴールを目指すコーチング 3.迷ったときのコーチング 4.困ったときのコーチング 5.よく使うコミュニケーション技法 6.ロールプレイでコーチングを学ぶ 7.プロセスレコードでコーチングを学ぶ 8.複数を相手にするグループコーチング 9. 一人でできるセルフコーチング 10.逆さまのピラミッドと目標管理 11.ティーチングとコーチングの使いわけ 12.コーチングFAQ

 ビジネス界ではブームが山を越したようですが、ブームが去っても必要なアプローチであり、「どのように現場に定着させるか」が今後の課題だといえるでしょう。カウンセリングやティーチングなど、他のアプローチも必要なのであり、それらとうまく共存させないと、医療や福祉や教育の現場では定着しません。対人援助の現場に適正な規模(範囲)で定着させるための出版です。コミュニケーション論などを専門とする社会科学者として、コーチングの可能性と限界を見極めながら、冷静かつ現実的な視点で執筆しました。

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コーチングの原典(原点)

Journal_of_information_processing_and_ma 「情報管理」5月号(vol.50 no.2)の「この本!~おすすめします~」というコーナーで、「はじめのコーチング 本物のやる気を引き出すコミュニケーションスキル」(ジョン・ウィットモア著 清川幸美訳 ソフトバンク クリエイティブ刊)の推薦文を書いた。一応、原稿料をもらっているので、ここで全文を紹介するわけにはいかない。ウェブ上でも全文を閲覧できるので、ここでは要点だけを掻い摘んで紹介しておこう。

 「はじめのコーチング」という邦題は、この本がコーチングの原典であるだけではなく、原点でもあることを表している。コーチングはアカデミズムと関係のないところで発展してきた。そのせいか、コーチングに関する様々な誤解や混乱もみられるが、この本を読めば本来のコーチングを理解することができる。心を癒す心理カウンセリングとは異なり、コーチングは自己実現を目指して頑張る人をサポートするものである。また、コーチングは褒めたり叱ったりして人を家畜扱いするのではなく、人が本来的に持っている高い能力を開かれた質問によって引き出すのである。

 あえて書かなかったが、占いや心理テストがコーチングでないことは言うまでもない。「はじめのコーチング」は、ハウツー本のように安くて読みやすい。ハウツー本ばかり読んで誤解や混乱の渦中にある人には、本当にお薦めの1冊である。

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