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看護師による間違いだらけの目標管理

 日本医療機能評価機構は病院機能評価において、「看護部門の目標管理」を求めただけなのに、当時(20世紀終わり)の企業もそうしていたという理由で、看護界は目標管理をスタッフ個人に押し付けてしまった。しかも当時の企業は、各スタッフが主体的に取り組む仕事管理の方法であったドラッカーの目標管理を、能力成果主義と結びつけることで、スタッフ管理の手段に悪用していた。つまり、今の看護界は二重に間違った目標管理を導入しているのであり、そのうえ、目標管理が上手く行かないと嘆いているのである。
 この間違いをきちんと指摘できる看護管理学者と、私は出会ったことがない。そもそも、企業の間違った目標管理を看護界に紹介したのは、看護管理学者であった。だから今さら、「あれは間違いでした」と認めるわけには行かないのかもしれない。しかも、PDCAやBSCなどの企業の手法を紹介することに、相変わらず夢中になっている。看護界の問題を解決する鍵は看護界にあるのであり、ビジネス界にあるのではない。
 看護部門は、評価機構の文書にある通り、職場の「理念にそった看護部門の目標」をしっかり立てて、その達成を目指すべきである。たとえば「至誠と愛」が職場の理念であるならば、「あなたは誠実で愛情あふれる看護を提供されたと思いますか」と尋ねる患者満足度調査を実施し、退院する患者さんに「そう思う5.4.3.2.1そう思わない」の5点法で答えてもらい、「今年の平均は3点だったから来年は4点以上を目指そう」というように。
 さらにスタッフ個人は職場の理念や目標を念頭に置きながら、一人一人の患者さんに対する看護過程をしっかりと展開するべきである。なぜならば、ドラッカーの提唱した仕事管理の方法としての目標管理は、看護師にとっての看護過程のことだからである。ただし新人が一人で看護過程を展開するのは困難である。したがって、まずは「先輩の指導のもとにマニュアル(パス)通りに看護ができる」ことを目標とし(ラダーⅠ)、次に「先輩がいなくてもマニュアル通りに看護ができる」ことを目標とし(ラダーⅡ)、その上でようやく、単に「リーダーシップが発揮できる」だけではなく、「マニュアルを超えた質の高い看護が看護過程を通して提供できる」ことを目標とし(ラダーⅢ)、最終的にそれが常にできる一人前のゼネラリストやスペシャリスト(ラダーⅣ)へと育っていただきたい。
(※写真は評価機構による当時の文書)

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<文献>
・日本医療機能評価機構:病院機能評価統合版評価項目V2.0、1997.
・P.F.ドラッカー(上田惇生訳):現代の経営(上)、ダイヤモンド社、2006.
・諏訪茂樹:質の高いサービスを提供するマネジメントと組織の在り方、看護管理26(1)、医学書院、2016.
・諏訪茂樹:やる気を引き出す目標管理、ナーシングビジネス11(2)、メディカ出版、2017.

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