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君たちはどう生きるか ― 読書メモ及び聖地巡礼

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 読んだ記憶はあるが、内容を忘れている『君たちはどう生きるか』を再読し、気になった文章を読書メモとして書留めます。また、同書の記述から舞台のモデルとなった場所を推察し、朝食前にランニングで聖地巡礼してみます。

読書メモ<1>

 「自分ばかりを中心にして、物事を判断していくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしまう。大きな真理は、そういう人の目には、決してうつらないのだ」(マガジンハウス新装版p.32、岩波文庫版p.26)。

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聖地巡礼【 1 】

 水谷君の姉のかつ子さんはコペル君の家の近くの女子大に入学するとあるが(新装版p.283、文庫版p.266)、旧小石川区内の女子大といえば、戦前のお茶の水女子大は師範学校だったので、おのずと日本女子大となる。私のランコース上だ。

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読書メモ<2>

 「ある時、ある所で、君がある感動を受けたという、くりかえすことのないただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることがわかってくる。それが、本当の君の思想というものだ」(マガジンハウス新装版p.60、岩波文庫版p.54)。

F
聖地巡礼【 2 】

 コペル君の家の近くの女子大が日本女子大だとすれば、省線電車の最寄り停車場は目白駅となる。確かに、停車場の付近のにぎやかな街までは1.3㎞と、だいぶ道のりがある(新装版p.78、文庫版p.70)。私の朝食前ランの圏内だ。

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読書メモ<3>

 「世間の目よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当の君の魂で知ることだ」(マガジンハウス新装版p.63、岩波文庫版p.56)。

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聖地巡礼【 3 】

 「小石川にある大きなお寺(護国寺)の前で電車をおり、新しい大通り(不忍通り)について(寺に向かって左手に進み)、そのまま右に坂をのぼっていくと、広い大きな墓地(雑司ヶ谷霊園)に出ます。その手前の坂の下から左へ、狭いごみごみした通り(雑司が谷弦巻通り)があって、その右側に浦川君のうちがあるということでした」(新装版p.109、文庫版p.101、カッコ内加筆)。記述が実際の地理とぴったり合う。ちなみに「狭い通りの両側には、一間半か二間間口の小さな店が、肩を押しあうようにして並んでいます」とあるのは、通りに入って500mほど先にある雑司が谷弦巻通り商店街のことだろう。特に、同商店街にある雑二ストアは、当時の雰囲気を今も残している。作者の吉野源三郎は学生時代に関東大震災にあい、小石川区雑司が谷に移って酒屋に1年半下宿していたので、この辺りの地理には詳しいはず(「吉野源三郎 よむ年表」参照)。

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読書メモ<4>

 「人間は、人間同士、地球を包んでしまうような網目をつくりあげたとはいえ、そのつながりは、まだまだ本当に人間らしい関係になっていない」(マガジンハウス新装版p.105、岩波文庫版p.95)。

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聖地巡礼【 4 】

 冒頭の「へんな経験」に出てくる銀座通りのデパート前から日本橋方面を臨む(新装版p.15、文庫版p.10)。ラン圏外なので早朝に地下鉄で移動し、ここから自宅に向かって走り出す。

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読書メモ<5>

 「正しい道義に従って行動する能力をそなえたものでなければ、自分の過ちを思って、つらい涙を流しはしない」「人間である限り、過ちは誰にだってある。そして、良心がしびれてしまわない以上、過ちを犯したという意識は、僕たちに苦しい思いをなめさせずにはいない」(マガジンハウス新装版p.272、岩波文庫版p.256)。

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聖地巡礼【 5 】

 「石段の思い出」に出てくる天神様の裏の石段(新装版p.256、文庫版p.241)。銀座のデパート前からスタートし、湯島天神経由で自宅まで走ると、いつもと同じ、ちょうど10㎞だった。

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読書メモ<6>

 最後に、今では使ってはいけないとされる表現が随所に見られるが、80年前の戦前に書かれた本なので仕方がない。また、貧困層に距離を置いた記述も気になるところだが、生活に余裕のある人でないと進学できなかったし、学問に触れて自由に物事を考えることもできなかった時代だったのだろう。それにしても、この本で扱われているテーマは、今でも未解決の社会科学における根本問題の一つであり、本書は社会学、経済学、哲学の分かりやすい導入書だと思った。「人間が人間同志、お互いに、好意をつくし、それを喜びとしている…本当に人間らしい人間関係」(マガジンハウス新装版p.106、岩波文庫版p.97)、そして、そういう人間関係からなる社会を、どう築いていくか。それは、私たちがどう生きるかにかかっているのだろう。

G
聖地巡礼【 6 】

 「生垣にはさまれた白い道路が遠くまでのびて、そのはてに、瓦屋根が一つ、暖かそうに日を浴びて光っています。…あの瓦屋根のところを曲がると、もうコペル君のうちです」(新装版p.287、文庫版p.271)。確かに、...目白駅から日本女子大方面に目白通りは遠くまで伸び、旧小石川区に入ったところで正面に日本女子大新泉山館の三角屋根が見えてくる。そして、その手前を右に曲がると目白台1丁目(旧高田豊川町)、左に回ると作者の吉田源三郎が学生時代に下宿していた目白台2丁目(旧雑司ヶ谷町)となる。なお、吉田の下宿先か否かは不明だが、目白通りから不忍通りに入ったところに三河屋酒店があったし、300mほど先には稲垣屋酒店が今もある(「大日本職業別明細図 小石川区昭和3年」参照)。

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〈完〉 PDFファイルのダウンロード → 聖地巡礼:君たちはどう生きるか

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