« 神楽坂祭り | トップページ | ポインター機能付きPCリモコン(ワイヤレスマウス) »

行動変容ステージと支援方法(その2)

行動変容ステージ別保健指導

 「平成21年度生活習慣病対策健診・保健指導に関する企画・運営・技術研修(計画編)」が国立保健医療科学院(埼玉県和光市)で開催されて、セッションⅥの「特定保健指導の実際:効果的な保健指導のポイント」において「コーチング」を担当した。シンポジューム形式のセッションで、与えられた時間はたったの20分だった。演習を中心とした終日や二日間にわたるワークショップ研修を得意とする私としては、とても困難な仕事であったが、伝えたいことは何とか表現できたと思う。

 これまでに、県レベルや地区レベルの研修で保健師や栄養士の方と接してきて、特定保健指導のために疲れ切っている人がいることを知っていた。原因の一つは、無関心期の人にまで積極的支援をしようとして、なかなか結果を出せないことである。時には拒否的・攻撃的な反応に直面してプライドが傷つき、自己効力感が低下してしまった人さえいる。もちろん、これまでのような健康レベル別保健指導(下図)で上手く行くのであれば、それでもいい。しかし、上手く行かず、担当者が燃え尽きてしまうのであれば、次のような行動変容ステージ別保健指導(上図)に切り替えた方が、より効率的であるし、担当者自身のモチベーションも維持できるであろう。

 まずはこれまで通り、健診で「メタボ群」「予備群」「健康群」とレベル別に分けた上で、「メタボ群」と「予備群」の人を「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「維持期」にステージ分けするのである。ただし、これまでのように、「何ヵ月後に行動する気があるか」とか「実行して何ヶ月経つか」でステージを分けしていては、実際の指導には役立たない。「関心があるかないか」とか「実行する気があるかないか」とか「継続に自信があるかないか」とかで分けてこそ、相手にとって必要な支援内容を考えることが容易となる(「行動変容ステージと支援方法」参照)。

 無関心期の人にまでコーチングで「どうしたら減量できると思いますか?」などと質問すれば、「関心ない」という答えが返ってきても不思議ではない。無関心期の人にコーチングを行うのは極めて困難であり、だからといって指示や助言によるティーチングで関わっても、なおさら空振りに終わるであろう。無関心期の人には、まずは関心を持ってもらう援助が必要なのであり、そのためには行動変容の必要性を理解してもらえるように、あの手この手と工夫を凝らしながら、文書などで情報提供としてのティーチングを繰り返すのが最も現実的なのである。その際には、癌や脳梗塞や心臓病になる危険性(ネガティブ情報)を伝えて脅すだけではなく、生活習慣を改善することで健やかな暮らしを実現した人の例(ポジティブ情報)も、同時に伝えて行きたい。

 関心はあるがやる気のない人が、関心期の人である。そして、やる気がない主要な背景として、生活習慣を変えることへの不安をあげることができる。したがって、生活習慣を変える方法や過程に関する情報を提供して、「それなら私にもできる」という自己効力感を高めてもらうことが大切であり、そうすることで「ちかぢかやってみたい」という気持ちになってもらうことが課題なのである。関心期の人には、直接に会うことも容易となる。したがって、面接による情報提供も可能となり、その際には傾聴しながら受容・共感し、信頼関係を築くカウンセリング技術も欠かせない。また、グループワークに誘い、オブザーバー参加してもらうことで、方法や過程を理解してもらうのもよいであろう。

 「ちかぢか実施したい」という準備期に入ると、ようやくコーチングが容易となる。目標を設定してもらい、行動計画を立ててもらう上で、コーチングが効果を発揮するのである。ただし、「どうすればよいか、教えて下さいよ」という相手には、「・・・されてはいかがですか」と助言(ティーチングの一つ)すればよい。また、誰かと一緒だとやる気になる人にはグループワークに誘えばよい。コーチングだけにこだわるのではなく、相手の自立度や傾向に応じてティーチングやグループワークも併用することが、何よりも現実的であり、効果的なのである。

 「実行したものの、継続に不安がある」段階は、まだ実行期である。実行期の人には、継続する上での障害とその克服方法を考えてもらい、実践してもらう継続支援のためのコーチングが必要となる。もちろん、準備期に引き続き、必要に応じてティーチングやグループワークも併用することとなる。

 メタボ群であろうとその予備群であろうと、継続的にかかわる「積極的支援」が本当に必要なのは、準備期と実行期の人だと思う。継続に自信のある「維持期」の人には、目標と方法を確認した上で、半年後に結果を教えてもらう「動機づけ支援」でも充分だと言えよう。

 困難なケースに出会うほど、「こうすればOK」という究極の決定打を、どうしても求めたくなる。そして、秘策を求めてコーチングとかカウンセリングとか、特定の技術だけにすがろうとして、セミナー業者通いを繰り返す人もいる。しかし、どの技術にも可能性と限界があり、何にでも効く特効薬など、本来はない。困難なケースも、その背景は様々である。大切なのは相手の状態に応じて、カウンセリング、ティーチング、コーチング、グループワークなど、各技術を使い分けたり併用したりすることができる、プロフェッショナルなスキルなのである。

健康レベル別保健指導

 行動変容ステージと支援方法行動変容のための保健指導技術(援助技術)特定保健指導でのコーチング情報提供としてのティーチング指示による積極的ティーチング助言による消極的ティーチングティーチングとコーチングの使い分けグループワークによる問題解決セルフコーチングでダイエットCOMMUNICARE blog:コーチングなども、ご参照下さい。

文献:
諏訪茂樹『対人援助のためのコーチング -利用者の自己決定とやる気をサポート-』中央法規出版
諏訪茂樹「ティーチングとコーチングの使い分けによる健康支援」日本保健医療行動科学会年報 Vol.26 p86-88

|

« 神楽坂祭り | トップページ | ポインター機能付きPCリモコン(ワイヤレスマウス) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 神楽坂祭り | トップページ | ポインター機能付きPCリモコン(ワイヤレスマウス) »