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仕事のやりがい、社会的価値

1. Hospitalization20081024180755120サービス業への転職は容易でない

 他者に迷惑をかけたり、騙したりして儲けようとしない限り、職業に貴賤がないことは言うまでもない。ただし、人には向き・不向きがあるし、やりたい仕事も人様々である。急速な景気後退の中、「仕事を選んでいる余裕はない」とか、「雇ってもらえるだけで有難い」という意見もあるが、一方がダメなら他方へと、簡単に職業を変えられるものではない。

 このことを如実に物語っているのが、業種間での有効求人倍率の違いである。2008年11月の東京都の統計データで見ると、製造業での有効求人倍率は0.55倍であり、つまり一人の求職者に対して0.55つの仕事しかない。それに対して、介護の有効求人倍率は3.54倍であり、外食産業にいたっては5倍以上になるという。

 先進国では工業中心からサービス業中心へと産業構造が移行しているのだから、製造業での求人が少なく、サービス業での求人が多いのは、当然のことであろう。にもかかわらず、求職者と求人側の間にミスマッチが起こり、有効求人倍率の差が簡単に縮まらないのは、やはり、異業種間での職業移動が容易でないためだと思われる。

2. 介護は専門家の仕事

 介護の分野ではここ何年か、深刻な人手不足に悩まされてきた。だから、不景気による就職難に期待したくなるのも、当然かもしれない。しかし、介護のマンパワーが景気に左右されるようで、本当にいいのだろうか。かつて、バブル経済がはじけた後の就職氷河期には、介護分野のマンパワーもある程度は充足していたが、景気の回復とともに人手不足に陥ってしまった。今後、不景気だからという理由だけで、たとえ介護分野に人が集まったとしても、そのような人は景気が回復すると、また介護から離れてしまうであろう。

 また、そもそも介護は、ベルトコンベアの前で行う組み立て作業とは異なる。働きかけの対象は物ではなく、生きている人間なのであり、しかも、利用者一人一人のニーズをアセスメントして、目標と計画を立てて援助サービスを提供し、その効果を評価するという労働様式は、本来、高度な専門職が行うものなのである。したがって、介護の担い手を育てるには時間がかかるのであり、景気に左右されて職業移動した人が直ぐに担えるわけではない。

3. やりがいや社会的価値を訴えて、腰をすえた教育を

 「就職が難しいときだから」と受験生に呼びかけている福祉系大学もあるようだが、なぜ福祉職のやりがいや社会的価値を訴えないのであろうか。破綻した幾つかの福祉ビジネスの経営者のように、本当は福祉のことなどどうでもよく、儲かりさえすればいいと考えているのではないかと、疑いたくなる。

 困っている人に喜んでもらえるように、援助サービスを提供するのは、やりがいのある仕事である。また、特に介護援助は、高齢社会や福祉社会になくてはならない社会的価値のある仕事でもある。このようなやりがいや社会的価値を訴えながら、腰をすえて教育しなければ専門家は育たない。ただ給料は安いし、きついし、汚いけど安定した仕事だからという理由だけで人を集めても、福祉のマンパワーは安定しないし、サービスの質の向上などは遠い話となる。

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