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組織改革なきコーチングなんて

shirt  職場の風土とか文化は、特徴のあるコミュニケーション様式を生み出します。「その件は上司に相談したうえでお応えします」というスタッフの言葉や、「私は聞いていない」「そんなことをやれと誰が言った?!」という管理職の言葉は、「上司の指示・命令には逆らえない」という職場風土から出てくるものであり、上意下達のピラミッド組織の表れなのです。そして、これらのコミュニケーション様式が繰り返されることによって、ピラミッド組織は維持されるのです。

 このように組織は、コミュンケーションによって成り立ち、そして維持されます。したがって、コミュニケーションの方法を変えるということは、組織を変えることなのです。ところが、組織改革とは関係なく、コーチングを導入しようとする職場があります。上意下達のピラミッド組織はそのままで、管理職がスタッフにコーチングでかかわろうとするのです。その結果、指示・命令しかできない管理職がスタッフの主体性のなさを嘆くという、おかしな現象が表れます。また、コーチングと称して、机を叩きながらスタッフを脅す管理職まで出てきます。管理職による指示・命令や脅しによって、スタッフが本当のやる気を出すはずはありません。

 さて、今日のコーチング・ブームの背景について、ここでまとめておきたいと思います。スポーツ界で生まれたコーチングが初めて本格的なブームになったのは、やはりビジネス・マネジメントの領域においてでしょう。ビジネス界では、やる気をなくした無責任な指示待ちスタッフが問題になるにつれ、コーチングに大きな期待が寄せられました。ところが、指示待ちスタッフを生んだのは、指示・命令しか出さない管理職であり、上意下達のピラミッド組織だったのです。

 今日でも多くの職場で見られる上意下達のピラミッド組織は、1871年にドイツを統一したプロイセン軍に始まると言われています。プロイセン軍は上意下達のみごとなピラミッド組織で何万人という軍隊を一気に動かし、近隣諸国を圧倒したのでした。小規模な軍隊が勝手に動いていた近隣諸国も、やがてプロイセン軍をモデルとする近代的な軍隊を持つようになったのです。

 軍隊以外の職場に初めてピラミッド組織を導入したのは、アメリカの自動車メーカであるフォード社でした。1903年に創業されたフォード社は、本格的なベルトコンベアを初めて導入したことでも知られおり、上意下達のピラミッド組織とベルトコンベアによる単純労働で、大量規格生産を実現したのでした。このようにして、ピラミッド組織は20世紀初めに軍隊から製造業へと広がり、やがて役所や学校や病院など、製造業以外の職場でも取り入れられるようになったのです。

 ピラミッド組織のスタッフは、マニュアル通り、指示通りに行動しなければなりません。例えば製造業のスタッフが、ベルトコンベアの前で勝手な行動を取ると、不良品が続出してしまうからです。ところが、20世紀の終わりごろ、先進国の多くは生産拠点を海外へ移すことになり、国内に残った生産現場では産業ロボットが単純労働を担うようになりました。こうして、製造業からサービス業へと産業構造の中心が移行するにつれて、スタッフの指示待ちが問題となったのです。サービス業でマニュアル通り、指示通りに働くだけでは、安かろう、悪かろうのサービスしか提供できないからです。

 上意下達のピラミッド組織のままで指示待ちを批難されても、スタッフは身動きできません。そこで、サービス業では組織改革に取り組まざるを得なくなり、逆さまのピラミッドが登場することになります。つまり、管理職の下にスタッフがいて、スタッフの下に顧客がいるという従来の組織から、顧客の下にスタッフがいて、スタッフの下に管理職がいるという新しい組織へと、職場全体を変革するのです。管理職が握っていた多くの権限は、スタッフへ大幅に移譲されます。権限を与えられたスタッフは、自らベストなサービスを考えて、主体的に提供しなければなりません。そして、管理職はスタッフに対して、コーチングでサポートすることになるのです。

 このようにしてビジネス・コーチングは、逆さまのピラミッドを実現する組織改革と結びつき、サービス業を中心に広まったと言えます。今日では、セル生産方式による少量多品種生産に移行した製造業でも、活力ある職場を目指して逆さまのピラミッド組織にする動きがあり、そこではコーチングが管理職の必須能力になっています。指示待ちスタッフがいらないのなら、指示しか出せない管理職もいらないのです。

集団・組織も使いよう

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文献:諏訪茂樹『対人援助のためのコーチング -利用者の自己決定とやる気をサポート-』中央法規出版

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コメント

指示と命令の定義・違いの事例を教えてください。

投稿: nagasawa | 2009/02/10 11:20

私は命令を指示よりも強制力が強いものとして位置づけています。そして、「しなさい」を命令の典型的な発話例として、また、「して下さい」とか「しましょう」を指示の典型的な発話例として、紹介しています。
ただし、指示(指図)を命令と同じものとして位置づける記述もありますし(例えば広辞苑)、「指示・命令」と表現する場合には両者を一体のものとして捉えている可能性が高いでしょう。

投稿: 諏訪茂樹 | 2009/02/10 19:36

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